ウォーレン・バフェットの投資
「コモディティ型企業」と「消費者独占型企業」
 バフェットは企業を2つのグループに分けて考えます。
 
 第一の企業群は、他社との差別化ができない低付加価値の「コモディティ型」です。
「コモディティ型」企業は、他社と同じようなサービスや製品しか提供できません。
顧客を獲得できるのは、もっとも低い価格を提示した企業です。
顧客にとって大事なのは価格です。
どこの企業が供給しているかは問題ではありません。
その結果、「コモディテイ型」企業は、利ざやが薄くなります。
そして、もっとも低コストの企業が生き残ります。
しかも、競争上の地位を維持するためには資金がかかり、収益を悪化させます。
 「コモディティ型」企業は投資対象として適していません。
  
 第二の企業群は、提供するサービスや製品に対し独占力を持っている「消費者独占型企業」です。
 バフェットは、「消費者独占型企業」を通行料を取る橋にたとえています。
船を漕いだり、泳ぎたくなければ通行料を払って橋を渡らなければなりません。
橋の所有者は、独占的な地位にあります。
通行料がいくら高くてもその橋を渡るためには、通行料を払わなければなりません。
ですから、橋の所有者は独占的な地位により、自由に料金設定ができます。
よって、高い収益性を得ることができます。
 消費者独占企業はその特性から、業績が優れており、高い株主資本利益率(ROE)、高い利益の伸びを示します。
 その結果、景気動向に関わらず、市場平均を上回る株価パフォーマンスを示しています。  



<コモディテイ型企業の特性>
 コモディテイ型企業は、似たような製品を作り販売競争をしています。
価格のみが顧客を獲得する要素です。
よって、消費者にとって重要なのはどこの企業の製品かではなく、どの企業の製品価格が一番安いかということです。 
 コモディティ事業の代表例としては以下のようなものがあげられます。
航空会社
鉄鋼会社
製材会社
石油会社

 例えば、ガソリンを入れるとき、どこの石油会社のガソリンか気にしますか?
○○石油のガソリンじゃないと、車が動かないことはありません。
 いいかえれば、ブランド価値がほとんどない製品を供給する企業がコモデイティ企業です。

 コモデイテイ企業のなかで生き残るのは、もっとも低コストの企業です。
コストが低いほど大きな利幅が得られ、競争相手を排除できるからです。
しかし、低コストを維持し競争力を保つためには莫大な資金と労力が必要です。
利益が企業の価値を高めるための新製品開発や企業買収に向けられず、設備投資に回ってしまうからです。
その結果、企業の成長は抑えられてしまいます。
財務面でも、設備投資に必要な資金を調達するために巨額の負債を抱える場合があります。
また、他社との違いを消費者に示すため、莫大な額の宣伝広告費が必要です。
こうして、コモディテイ型企業の財務は悪化していきます。


 コモディテイ事業にも好況がやってきます。
需要が供給を下回り、各社は製造能力を高めていきます。
売上高や利益は増大していきます。
投資家は配当増を労働者は賃金増を要求してきます。
しかし、やがて好況は終わります。
後に残るのは過剰な生産能力と悪化したバランスシートだけです。
その結果は、株価の暴落です。

 コモディテイ型企業にはつぎのような特徴があります。
@売上高利益率、在庫回転率が低い
 儲けが多く、在庫回転率が高い
  消費者独占型企業 
 儲けが多く、在庫回転率が低い
  高級品取扱業者(消費者独占型企業の可能性あり)
 儲けが少なく、在庫回転率が高い
  ディスカウントショップ(消費者独占型企業の可能性あり)
 儲けが少なく、在庫回転率が低い
  コモディティ型企業
売上高利益率(儲け)、在庫回転率が両方とも低いのがコモディテイ型企業の特徴です。
どちらか、または、両方高ければ事業として魅力があるものになりえます。

A株主資本利益率(ROE)が低い
 収益性を示すROEが低い企業はコモディテイ型企業である可能性が高い

Bブランド価値がない
 ブランド名が意味がない企業はコモディテイ型企業である

C競争相手が多い
 業界に競争相手が多いほど、安売り競争が激化し、利幅が小さくなる

D業界の過剰生産能力
 業界全体でみて、過剰な生産力を抱えていると需要が増えても価格はほとんど上昇しません。

 コモディテイ型企業は生産量が多いほど有利なので、企業は生産能力を増加させ利益を増やそうとします。
しかし、他の企業も同じことを考えているので、過剰生産能力がどんどん増えていきます。
そして、収益性はどんどん低下していきます。

E利益が不安定
 コモディテイ型企業の業績は景気に左右されるので、利益が不安定です。

F利益が設備稼働率に依存する
 設備の稼働率が低いと業績がすぐ悪化する企業はコモデイティ型企業の可能性があります。
固定資産が多いため、ある一定以上の設備稼働率がないと急激に収益が悪化します。

 コモディテイ型企業が優秀な経営陣によって経営されたとしても、優良企業にはなり得ません。
経営環境の悪化に対しても弱く、回復力も小さくなります。
コモディテイ型企業は、長期的に見ると投資収益もせいぜい並程度にしかなりません。
ですから、コモディテイ型企業は投資対象として適切ではありません。



<消費者独占型企業の特性>
 提供するサービスや製品に対し独占力を持っている企業が「消費者独占型企業」です。
独占力があるため、価格設定力があり高い収益力を得ることができます。
 優良企業でも業績が悪化したり、株価が暴落することがあります。
しかし、優良企業は優れた事業素質により、一時的な危機から比較的容易に逃れることができます。
 消費者独占型企業は、消費者に特定の企業や企業名をイメージとして想起させることができます。
また、特許や製造技術が独特の製品提供力を生み出すことで独占力を得ることができます。
 独占力により、企業に優れた業績力をもたらします。
その結果、高いROE(株主資本利益率)、利益の大幅な上昇、株価の上昇につながります。
こうした消費者独占型企業は景気の動きに関わらず、一貫して市場平均リターンを上回ってきました。
ですから、消費者独占型企業は投資対象として適しています。
 
 消費者独占型企業を見分けるための基準は次のようなものがあります。
@消費者独占力を持つと思われる製品やサービスがあること
 小売店のなかで、取り扱わなければ商売が成り立たない製品を製造している企業
 例:清涼飲料、チョコレートなど
 独占的なサービスを提供している企業
 例:テレビ局、クレジットカード会社など
 
 以上のような企業は消費者独占型企業である可能性があります。
 しかし、企業がブランドを上手く活用していない場合があります。
 事業の中で、ブランドが十分活用されている必要があります。
 
AEPS(1株あたり利益)が強い増加基調にある
 すばらしいブランド力がある製品やサービスを提供していたとしても、企業自体の経営がまずければ、意味がありません。
 EPSが強い増加基調にあり、利益がある程度予想できる企業が適切な経営が行われていることになります。
 
B多額の負債を抱えていない
 企業の本当の財務力を測る上で、株主資本比率はあまり役に立ちません。
帳簿上の株主資本額と支払い能力はほとんど関係がないからです。
銀行が評価するのは、元利の支払能力であって、株主資本額はほとんど意味がありません。
 利益で負債を返済すること力から、本当の財務力を知ることができます。

 消費者独占型企業は、通常の場合、多額の現預金を持ち、借金はほとんどありません。
企業に危機が生じても、解決するだけの財務力があります。

CROE(株主資本利益率)が高い
 ROEの高い企業は株主に対して、十分な富を生み出しています。
ただし、一時的ではなく、一貫したROEの高さが重要です。

D現状維持のために再投資が必要でない
 企業が配当に必要な金額以上の利益をあげれば、その差額が内部留保になります。
内部留保を現状意味のため、設備投資に再投資しても、株主の利益になるとは限りません。

 消費者独占型企業はその例外です。
現状維持のための再投資があまり必要がありません。
よって、より株主の利益になる再投資を行なうことができます。

E新規事業や自社株買戻しに使える資金が潤沢である
 平均以上のROEをあげることができる事業があるなら、その事業に再投資したほうが有利です。
高収益の既存事業の拡大や別の高収益企業に再投資することで、投資効率が高まります。
いわゆる利子が利子を生む複利の効果が発生し、時間が経つほど再投資の効果が大きくなります。
もし、平均以下のROEしかあげられないなら、自社株買いや配当に回すべきです。

 消費者独占企業は潤沢なキャッシュを保有しているため、 再投資や自社株買いに回すことができます。

Fインフレによる物価上昇を価格に転嫁できる
 インフレとは、継続的に物価が増加することをいいます。
コモディテイ型企業は人件費、原材料費などが上昇する一方で、激しい競争のため製品の価格は低下します。
その結果、莫大な損失が発生し企業の活力は低下していきます。

 消費者独占型企業は、インフレに合わせて価格を上昇させても顧客を失うことがありません。
消費者独占型企業に投資することで、インフレに対応することができます。

G再投資による利益が株価上昇につながる
 消費者独占型企業の一部あるいは全部を妥当な価格で購入することで、内部留保による再投資で株価が上昇します。


 このように、消費者独占型企業となるためには優れた事業素質を持っている必要があります。
しかし、消費者独占型企業も長期的に見ると、事業素質が弱体化する可能性があります。
たとえば、以前は消費者独占型企業が存在した、タバコ業界や航空業界がその例です。
タバコ業界は、健康意識の高まりにより、タバコが吸われなくなっています。
航空業界は、規制緩和により新規参入企業が増加したため、企業が弱体化しました。
 
 消費者独占型企業も永遠に優れた事業素質を持つわけではなく、時代の変化の影響を受けます。


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